AFC決勝。

  • NE@IND

「いいか、ブリッジではときどき、どんなに勝ち目が薄くとも勝つチャンスはそれしかないのだから、希望どおりにカードが配られるという仮定にもとづいてプレイしなければならない。幸運に恵まれれば、勝つ。そうでなければ、そうだ、どうせ負けるはずだったんだから、少なくとも成功の可能性に挑戦したことにはなる」

「オールド・ディック」L・A・モース


 クロスゲーム・ショウのトリを飾ったのは、18点差を引っくり返す大逆転劇。しかし、心臓が痛くなるような劇的な試合ではありましたが、終わった時に「まさかの」という印象はありませんでした。かのNEが、あのINDに逆転負けしたにも関わらず。その逆ならともかく。それというのも、NEに配られていた手札では、そもそも限りなく勝ち目が薄かったのですから。前半は、まんまと希望通りのカードを引き当ててリードを奪うことができたのですが。
 逆に言うと、唯一切ってはいけないをカード切ってしまったのが、前半のIND。ペイトン・マニングは、あくまでも「INDはマニングのチーム」であろうとしたのか、WRマーヴィン・ハリソン、レジー・ウェインとのホットラインでの勝負に出たのがド裏目。魔人と化しているアサンテ・サミュエル、更にこちらも素晴らしい出来だった逆サイドのエリス・ホブスというNEのCBとの局地戦となってしまい、サミュエルにはINTリターンTDまで奪われるという大惨敗を喫することに。
 それが、後半。リターンTD喰らった後、失意のズンドコに落ち込んでたマニングがハーフタイム中に過ちに気づいたのか、前半は消え気味だったRB、TEを前面に押し出して、厚みを活かした総力戦に切り替えてきました。そして、その気づきは、幸いにも遅過ぎることはなかった。総力戦となると、NE守備はもういけません。SD戦もそうでしたが、厚みをこらえられるだけの足腰が今のNEディフェンスには、全くない。RB、TEに対しては、S、LBが対応することになるわけですが、ロドニー・ハリソンが間に合わず手薄なままだったSがやられるのはともかく、NEの王朝時代を支えたテディ・ブルスキ、マイク・ブレイベルの黄金LBコンビがなす術なく押し込まれていたのはショッキングでした。これまでは、ここぞというところでこのLBコンビが会心の一撃を繰り出すことで、勝負をものにしてきたのですが。2人がベンチに並んで呆然と荒い息をついてる姿は、見てて悲しくなりました。解説の高野元秀氏が、盛んにNEのアウェイ連戦による疲労というのを心配してましたが、30代の2人にはことさらキツかったのかもしれません。
 ビル・ベリチックとトム・ブレイディは、それでも最後まで可能性に挑戦しましたが、WRリシェ・コールドウェルの瞳孔開きすぎ落球(ビックリしたいのはこっちだっての)などもあって、SD戦に続いての幸運には恵まれなかったようです。そもそも、相手にどんなカードが来ようとも、あらゆる可能性をカウンティングした上で、それを全て封じることで勝ってきたのがNE。そこには、幸運の入る余地などなかったはずですから、この敗北を不運と嘆くこともないでしょう。
 INDは、ついに、NE>>(超えられない壁)>>IND、という図式を乗り越えました。まあ、NEの方が壁から落ちてきたという面もありますが、最後の3連続ランによるTDなど見ると、最後の一歩はINDが自分の力で乗り越えたと言うべきなんでしょう。今までなら間違いなく3回中2回以上はパス投げて、きっと止められてたと思いますもの。

  • 追記。

 最後、ブレイディの投げたパスがINTされジ・エンドとなった時、福原アナが「あっけない結末」と言ったことに対して、高野氏が「そんな風に言うべきではない」と強く反論してました。ブレイディは、最後まで王者の矜持をもって勝利の可能性のためにプレイしていた。その誇りには敬意を払うべきだと。この日の福原アナは、初っ端から夜に放送するNFC決勝の結果を連呼したり、まだどう試合転ぶか分からないというのに「IND勝てばアフリカ系アメリカ人HC同士のスーパーボウル」なんてことを何度も言ったり、いささかデリカシに欠ける実況で残念でした。史上初か知りませんが、そんなこと言ってる場合じゃないだろうと。まあ、NFCの結果は、どっちにしろ放送画面からバレるだろうと私は諦めてた(実際、スタジアムのスコアボードで結果映されてたりした)ので別にいいですけど。ただ、ゴルフ中継延長でイライラしてた人には追い討ちになったかもしれません。何をプレイオフまでやってるか。